失敗の本質―日本軍の組織論的研究
昨年末ギリギリに読み終わっていたがやっとBlogに書ける。
自分自身、初めて読んだ本についてBlogを書くことになるが、よくあるブックレビューというよりも、読んで学んだこと・気づいたことをメモし、次に繋げるようなエントリーとしたい。
- 作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1991/08
- メディア: 文庫
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■ この本を読むきっかけ
野中郁次郎氏は有名すぎる方であるが、最初知った時は経営学とか(組織論とか)そっち系の先生だとおもっていた。そういえば数年前、会社の研修で『経営管理(日経文庫 経営学入門シリーズ)』を読んで感想文を書いたこともあった。
知識創造企業、暗黙知と形式知、SECIモデル・・・あたりは野中氏の名前やナレッジマネジメントという言葉を使わなくても聞いたことがある人は多いはず。エンジニアよりも、むしろ経営に近い人の方がこの辺はピンと来るかもしれない。
そんな野中氏は、数年前よりアジャイル界隈でも注目されている。アジャイルの手法のひとつであるスクラムとともに。このスクラムの名称は、野中郁次郎と竹内弘高の両氏が Harvard Business Review 誌に発表した論文 "The New New Product Development Game" からきている。新製品開発のプロセスのひとつ(下図 Type C)としてキヤノンやホンダは「ラグビーのようにボールを前後に回しながらチームで一丸となってボールを運んでいる」と。この辺は平鍋氏のブログにとてもよくまとまっている。
*補足*野中氏がアジャイル手法のひとつであるスクラムを提唱したわけではないが、スクラムの考え方の源流はこの論文にある
※The New New Product Development Game - Harvard Business Reviewより
前置きが長くなったが、日本の組織研究という観点から、どのようにアジャイルのスクラムが生まれたかをもっと知りたいと思ったのがこの本を手に取ったきっかけである。
ちなみに、上記論文が発表されたのが1986年。その2年前にこの『失敗の本質』は初版刊行となっている。野中氏が何に興味を持ち、何を研究していたのか。そしてどうあるべきと導いたのか。それを知るためにも、まずこの『失敗の本質』を読むことにした。
*補足*この後(1991年)野中氏はあの知識創造企業(The Knowledge-Creating Company)をHarvard Business Review 誌に発表
■ざっくり概要と感想サマリ
ここでは本の超概要と感想サマリだけを記載し、詳細や特記したい点については後続に記載する。
日本軍の持っていた組織的特質をある程度のところまで創造的破壊の形で継承したのはおそらく企業組織であろう。(中略)戦後の日本企業組織にとって最大の革新は財閥解体であった。(中略)その結果官僚制の破壊と組織内民主化が著しく進展し、日本軍の最も優れていた下士官や兵のバイタリティが湧き上がるような組織が誕生したのである。(中略)日本軍の戦略発想と組織的特質の相当部分は戦後の企業経営に引き継がれているのである。
ただし当時はバブル崩壊後の日本。最後にはこう締めくくっている。
われわれの得意とする体験的学習だけからでは予測のつかない環境の構造的変化が起こりつつある今日、これまでの成長期にうまく適用してきた戦略と組織の変革が求められている。
スクラムの源流を学ぶためにこの本を手に取ったが、そこにあったのは日本軍の特徴から繋がる戦後の日本企業であった。ソフトウェアの発展の流れの中におけるアジャイルを考えるとき、まったく別の流れからスクラムの考え方が生まれたという事実はとても興味深い。どんなに素晴らしい技術があったとしても、それを活用できる組織でなければならないし、IT業界に身を置くひとりのエンジニア、というよりビジネスマンとして、これからもこの野中氏の研究を一層掘り下げていきたい。
次は、野中氏のこの研究の続きにあたる「アメリカ海兵隊」を読むこととする。
■その他メモ
- 第二次世界大戦における大東亜戦争について、ナショナリズムとは関係なく、歴史的事実をもっと勉強しなければいけないと痛感。
- ノモンハン事件
- ミッドウェー作戦
- ガダルカナル作戦
- インパール作戦
- レイテ海戦
- 沖縄戦
- 軍隊が採用した、合理性・効率性を追求した形であるとされる階層型官僚制のことをもっと調べる(組織論)。システム開発・ソフトウェア開発におけるプロジェクトも、基本的には階層型組織である。
- 日本文化の特徴として「沈黙という美徳」や「言葉にせずとも分かり合える」的なことは良く言われるし、そのような傾向はいまでもある。
- 学習する組織と学習しない組織。本書でいえば、科学的・理論的な面を重視するアメリカ軍と、経験則の中を超えた学習をあまりしない日本軍。特にアメリカ軍の場合はガダルカナルからの学習でによる水陸両用作戦で海兵隊が活躍。
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